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店主の選書から多様な生き方を考える、大阪本町の5坪の本屋『toi books』

『toi books』は、2018年に閉店した心斎橋アセンスの書店員 磯上竜也さんが始めた5坪の小さな本屋。「誰もがみんな子供だった」「それぞれの暮らし」「この世でもっとも難しい」など思わず手に取りたくなるテーマごとに、書籍が分けられています。あつかう本は多岐に渡りますが、磯上さんは心斎橋アセンスで文芸書の担当だったため、小説やエッセイ、短歌など文芸書が豊富に取り揃えてあるのが特徴です。今回は磯上さんに選書や文芸書の魅力について伺ってきました。

 

問いがコンセプト。5坪の本屋toi booksとは?

toi books のあるOSKビル2階

『toi books』は大阪御堂筋線本町駅から徒歩5分。OSKビルの2階にある小さな本屋です。

OSKビルはチャイ専門カフェ、古着屋など小さくて個性的なお店が集まるビル

toi booksの特徴は読者に「問い」を与える本を選書していること。磯上さんにとって良い本は、答えを与えるだけではなく、読む人にとって考えるきっかけが生まれる本。大きな本棚にはテーマごとに本が分けられ、並べられています。

 

磯上さんが文芸書に魅力を感じる理由

今回話を伺った店主の磯上さん
小説や短歌、エッセイなどの文芸書コーナー

山下:

小説や短歌、エッセイといった文芸書の魅力とはなんですか?

 

磯上さん:

文芸書は他のジャンルと比べ、答えのない、余白とも呼べるものがたくさんあると感じています。この余白は、読む人にとって考えるきっかけをくれるものです。パッと理解できるものではないけれど、読み解いていく中で自分の考えが深まっていく。そこに文芸書の楽しみや魅力があると思います

山下:
選書はどんなコンセプトでされていますか?

磯上:
先ほどの余白の話とも繋がってくるのですが、答えだけではなく新たな「問い」を与えてくれる本を軸に選んでいます。そういった視点をもって、文芸書はもちろん、絵本や写真集など、手にとる人の視野が広がる一冊を丁寧に販売していきたいと考えています。

 

磯上さんに聞いたおすすめの3冊

今回のインタビューにおいて、磯上さんにおすすめの3冊を選んでもらいました
やがて忘れる過程の途中 アイオワ日記 / 滝口悠生(NUMA BOOKS)

著者がアメリカ・アイオワ大学の「International Writing Program」に参加した経験を日記の形で記した日々の記憶。英語が堪能ではない中で、世界各国の作家とともに過ごした時間。多様な文化にご飯やお酒。書かれていること、そして書かれていないことに思いをはせてゆっくり読みたい一冊。

大人になれば / 伊藤敦志(AIRS)

グラフィックデザイナー・伊藤敦志が、自身の子どもへのプレゼントとして描いていたグラフィックノベル。コデックス装、表紙の仕掛け、所々に散りばめられたオマージュなど、細部までこだわりをもって作られていて、何度も読み返したくなる楽しい一冊。

私と鰐と妹の部屋 / 大前栗生(書肆侃侃房)

「妹の右目からビームが出て止まらない。」、「こっくりさんと暮らして七十年になる。」一行目から引きが強い。とても奇妙なはじまりだ。けれどただそのまま奇想を広げていくだけでなく、生きる切実さを同時に切り取る。53の掌篇がつまった、自由で、残酷で、とても優しい一冊。

 

磯上さんにとってリアル書店の魅力とは?

山下:

ウェブメディアを通して、インターネット上で文章を気軽に読むことができる時代になりました。一方で紙の本の魅力はどう考えますか?

 

磯上さん:

まず何より物として存在していること。紙の本は文字情報だけでなく、物としての重さや質感、また読んだ場所や誰かに贈ってもらったなど、様々な情報がともに記憶に紐づけられていきます。そうした一冊一冊が知識とともに積み重なっていくことが魅力だと思います。

次に言語の質の面でも差違があると感じます。もちろん全てがという話ではありませんが、インターネット上の文章はPV数を意識せざるを得ないため、検索されやすい言葉や可読性の高い文体が使われ、中には編集や校正の目が行き届いていない文章もあったりと、どうしても質の面でムラが多いように感じます。出版されている本は何人もの目を通して一冊の形になるため、質がある程度担保されやすい環境にはあると思います。

最果タヒさんの詩集

3つ目は作家さんの個性や感性を体感できること。作者は本当に個性が豊かで、どうしてこんな表現を思いつくのだろうと思う瞬間があります。そういった人のありのままの表現が楽しめる本って魅力的ですよね。

山下:
ではリアル書店の魅力とは?

磯上さん:

自分が持っている興味や知識の外側を実際に体感出来ることだと思います。現状オンラインでは、本棚に並ぶ本を目の前にするような感覚を得ることは難しく、あくまで自分の興味に紐づいたものしか見つけられない部分があります

リアル書店では自分の興味の有無に関係なく本が並んでいて、自然と未知の世界の存在を感じることが出来る。知らない世界についての本がまだこれだけあるのだと、実感をもてることが魅力であり、楽しさだと思います。

良い本とは問いを与えてくれる本と語る磯上さん。取材に伺う前、おすすめの本を教えて欲しいとお願いすると、ゲストハウスやデザインなど宿を経営する私に関わるキーワードを意識しながらも、そこにこだわりすぎず新しい発見がある本を教えてくれました。ぜひ『toi books』で今まで知らなかった世界との出会いを楽しんでください。

ライター ヤマシタ(Twitter:https://twitter.com/yamashita1986

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名前

toi books

住所

〒541-0056

大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1−22OSKビル204号室

営業時間

 12:00~19:00 / 定休 木曜日

HP

https://mailtotoibooks.wixsite.com/toibooks

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